税金

「税務署に認められた」の勘違い

税理士業をやっていると時折、お客様から「知り合いからこんなこと聞いたんだけど、本当?」と聞かれることがあります。

その内容というのは、

「自分はこういう申告してるけど、税務署に認められてるよ」

「自分は無申告だけど大丈夫だよ」

といった具合の怪しげなものです。

当然このようなことを鵜呑みにしてはいけないのですが、その理由を解説していきたいと思います。

申告書提出時に何も言われなかったから認められたと思っている可能性

最近は電子申告が広まっていますが、紙の申告書を税務署に提出する場合のことを考えてみましょう。

税務署窓口の方は、提出された申告書に不足がないか(必要な添付書類がついているか、事業所得があるなら事業所得の決算書がついているか 等)といったチェックだけを行い、必要な書類が足りていれば申告書を受け付けます。

この段階で内容は精査されません。そもそも、受付の方は調査官でなく単なる事務員であることがほとんどです。

極端に言えば、プライベートの旅行代100万円を「旅費交通費」として計上していたとしても、この段階で指摘を受けることはありません。

受け付けられた申告書は、担当部署(個人課税部門、法人課税部門 等)にまわされ、そこで申告書の内容が精査されます。そこで怪しいということになると、「ここ調べてみようか」となるわけです。

「税務署に✕✕な申告書を提出しても何も言われなかったから大丈夫だよ」という人は案外いるものですが、そこで何も言われないのは当たり前なのです。

まだ税務調査が来てないだけという可能性

提出された申告書の内容に怪しい部分があると思われると税務調査となるわけですが、すぐに調査が行われるとは限りません。

通常、税務調査では過去3年分が調べられ、何か問題がある場合は5年、悪質な場合は7年まで遡ります。

定期的に調査のある大きな会社であっても、税務調査のスパンはせいぜい3年に1度程度です。

脱税の申告書を提出してから2,3年経過していたとしても、「まだ税務調査が来てないだけ」という可能性もあります。

また、無申告についてもすぐに連絡があるとは限りません。数年後に連絡があり、数年分まとめてペナルティが課せられることもあります。(無申告は高確率でバレます。)

税務調査で修正事項に上がらなかった可能性

税務調査では時間も限られていますので、1から100まで全てチェックすることは不可能です。また、もっと重大な事項がある場合に「こっちはとりあえず置いとこう」となることも考えられます。

(極端な例でいうと、プライベートと思われるもの50万円が経費になっていて、売上除外が1,000万円あったとすると、経費については指摘に留められ、売上除外について修正申告となるようなケースが考えられます。)

このようなケースであっても「これは経費として認められた」と勘違いしている可能性があります。

まとめ

無責任なことを言う人は案外多いものです。税務の知識以前に常識的に考えておかしいことも多々ありますので、そのような言葉は鵜呑みにせず、気になるようであれば税理士にご確認ください。

 

 

 

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